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「みんな違ってみんな良い」 の生物学的根拠

    
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「みんな違ってみんな良い」 の生物学的根拠

「みんな違ってみんな良い」 の生物学的根拠

生得的なヒトにおける普遍性に関する研究

看護をしていると、日々色んな人に出会います。ほんとに人間って多様だな~と

思うことが多々あります。

 

でも時々、「自分は~だからダメだ」とか「自分は~だから人より偉いんだ!」みたいな

ことを言う人がいて「え~?」と思うことがあります。


 

ここでは「みんな違ってみんな良いんです!」の根拠を書いていきます。

人間は一人では生きていけない、社会的な生物です。←だって集団で生活してます。

そして、その集団としてのシステムを適応度の高い強固なものとするために、

それぞれの個体にかなりの多様性が生ずるように進化の過程で発達してきたと考えられています。

その個体差を確実に実現するのが遺伝的な多型です。

 

つまり人間は社会のシステムや外的環境の状況がどうであれ、

社会の中に様々なタイプの人が必然的に存在するように、

心理的、行動的形質にも多様な遺伝的多型を用意したといえます。

しかし、もし人の特質が100%遺伝によって固定されてしまっているとすると、

予期できない環境の変化に対して適応できないことになってしまいます

つまり、基本的な遺伝構造を持ちながらも

学習によって表現型をある程度変容できるようにしたと考えられています。



人間も動物と植物と同じように、自然によって生み出された産物の一部です。

 

時々「私は~の家系だから他の人より遺伝的に優れている」みたいな考えかたする人いますが、

遺伝的影響を説明することは、人々を差別するためではなく、

むしろ遺伝によって一人一人がいかに豊かな内的資源を与えられているのか、

この自然の中でいかに特別な存在であるのかを解き明かす事につながります。

言うまでもないですが、

この地球上には進化の過程で数えきれないほどの種類の生命体が生まれてきました。

遺伝子の中には生命全体全てに共通する遺伝子もあれば人間にしかない遺伝子もあります。

 

これは遺伝子型の多様さを意味し、

と同時にその個体が自然の中でいかに特別な存在であるかを示しています。

 

面白いことに、

人間の利他行動(他者を助ける行動)などの特質が、

進化的・遺伝的基礎を持つことが研究で明らかにされています。

生得的なヒトにおける普遍性に関する研究

他人を助ける行動は遺伝的に組み込まれている

ここでは、他人を助ける行動(利他行動)について進化的、遺伝的基礎があるという根拠を書いて行きます。

 

自分の繁殖や生存を犠牲にして他の個体を助けるという利他行動は、遺伝子からみれば、

その個体が繁栄しなくても、別の個体にある同じ遺伝子が次世代にコピーされれば、同じ意味をもちます。


 

捕食者が多く存在したり、餌等が制限されている環境では自らが繁殖するよりも

親由来の遺伝子を共有している他の血縁者を助ける方が有効と言えます。

 

この利他的行動の進化の説明は血縁淘汰説と呼ばれています。

 

でも全ての人が血縁者ばかり助ける訳ではないですよね。

自分の身内や家族などの血縁者以外の人助ける行動を人間は勿論しています。

 

そして、人以外の動物でも、血縁関係にない個体の間に利他行動が起こることがあります

しかし、それは無条件に起きるものではなく、

将来の見返りが期待される場合に起きる取引的な行動であると言えます。

例えば、吸血蝙蝠は、血液を空腹の仲間に分け与える行動が起きることがあります。

吸血蝙蝠は、47から60時間ごとに新しい血液と食事を摂取しないと餓死してしまいますが、

同じねぐらにいる蝙蝠が餌を取り損ねた場合、雌達は互いに血液を吐き出して与えます。

 

そして、個々の吸血蝙蝠は自分が飢えている時に血液の餌を分けてくれた蝙蝠に自分が得た資源を与える傾向が非常に大きかった。という結果があります。

リー・ドガトキン『吸血コウモリは恩を忘れない 動物の協力行動から学べること』2004年.


吸血コウモリは恩を忘れない―動物の協力行動から人が学べること

つまりこのような他人を助ける行動は、組織の中でお互いに有益なものだと言えます。

一見利他的に見える行動は、そうすることでより多くの同じ遺伝子を残そうとする行為と考えることができます。

 

利他行動は協力を維持するメカニズムにつながり、生存・繁殖にとって有利なシステムとなると言えます。

 

まとめ・・・

遺伝子の組み合わせで様々な性質を持った人類は、その差異を嘆き、優越性を主張するより、

むしろそれぞれの資質を生かして社会の役割を担い、

協力していくことが大事であることを遺伝の影響は教えています。

つまり「みんな違ってみんな良い」のです。


 

参考文献

安藤寿康『心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観』2000年.講談社p.

心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観 (ブルーバックス)

リー・ドガトキン『吸血コウモリは恩を忘れない 動物の協力行動から学べること』2004年.

吸血コウモリは恩を忘れない―動物の協力行動から人が学べること

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