【④グリーフケアのこと】悲しむことは大切、だけどそれが病的になってしまう原因は?
喪失体験をしたあと、悲しむことは大切だと説明しました。
しかし、大切な人を亡くした時、悲しみがとても深くなって病気になってしまうことがあります。
どのような要因がその悲しみをさらに強く、
長引かせるのかを考える必要があります。
家族や大切な人を失うことは、
大きなストレスになり、時には精神的な病気を引き起こすこともあります。
悲しむことは大切、だけどそれが病的になってしまう原因は?
死別体験が強いショックとなり、
その後の生活で起こる変化や困難がさらに悲しみを深くすることがあります。
このような状況が続くと、複雑性悲嘆と呼ばれる、長引く深い悲しみの状態になることがあります。
そして、どのような要因がその悲しみをさらに強く、長引かせるのか具体的な事例をみながら
説明していきます。
死別体験におけるリスク要因についての事例検討
事例: 交通事故で5歳の息子を失った母親の場合(考察のため作成した事例です)
Bさんという32歳の母親は、2年前に家族でキャンプに行く途中、交通事故で5歳の息子を亡くしました。
Bさんの車は高速道路でトラックに追突され、息子はその場で亡くなり、夫は軽傷、Bさん自身も軽い怪我をしました。
事故の原因は運転手の居眠りでしたが、
その運転手が言った「すみません、寝ていました」という言葉がBさんにとって大きなショックとなりました。
それから2年が経ちましたが、Bさんの悲しみはますます強くなり、毎日仏壇の前で息子に話しかけ、ほとんど動かない状態になってしまいました。
夫はBさんを精神科医に連れて行きましたが、医師に「早く元気になりなさい」と言われ、
Bさんはもう病院に行きたくないと感じています。
Bさんの息子は交通事故で亡くなりました。突然の暴力的な出来事による死は、Bさんにとって強いショックであり、
これが心に大きな傷を残し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす原因となっています。
2.子どもを亡くすことの影響
親にとって、子どもが自分よりも先に亡くなることは非常に辛いことです。
特にBさんは息子がまだ5歳という幼い年齢で亡くなったため、未来を失ったように感じ、強い罪悪感を抱いています。
このような感情が、悲しみをさらに深めています。
3.周囲からの心ない言葉や態度
医師から「早く元気になりなさい」と言われたことで、Bさんは心のケアを十分に受けられていません。
このような言葉は、悲しみと向き合うプロセスを妨げ、Bさんにさらにプレッシャーを与えることになります。
特に日本では、感情を表に出すことがあまり奨励されていないため、Bさんは自分の悲しみや怒りを表現できず、苦しんでいると考えられます。
4.社会的サポートの欠如
交通事故で突然息子を失ったBさんには、病院や支援者からのサポートがありませんでした。
家族や友人との関わりが少なく、孤独を感じています。Bさんは、セルフヘルプグループなどの支援団体にも参加しておらず、
これが悲しみを和らげる機会を失っている要因になっています。