死別後、悲しみの感情は1日のうちに何度も変化する。
「死別後、悲しみの感情は1日のうちに何度も変化する。日内変動説 段階説ではない悲嘆(悲しみ)の回復過程
死別の悲しみのプロセスは一定していないと何度も書いてきましたが。
すべての人が段階通りにたどるわけではありません。
次に、段階説ではない悲嘆のプロセスを書いていきます。
Stroebe & Schut(2001)は死別への対処の二重過程モデルを提唱しています。 これはまず死別への対処方法として2種類の対処すべきストレスを想定しています。
①喪失に焦点をあてた対応:亡くなった人との関係や絆に焦点を当てた喪失自体に対する対処
(喪失志向コーピングと言われます)
②回復に焦点をあてた対応:死の結果として生じる二次的問題に焦点を当てた対処
(回復志向コーピングと言われます)
これらの否定的感情と肯定的感情が1日の中で変動しいくと考えられています。
あるときは
「喪失志向コーピング」である亡くなった
故人と向き合いグリーフケア(悲しみを感じる)を行い
またあるときは「回復志向コーピング」である
家事などに没頭し悲嘆からの気のそらしを行う等。
これは喪失志向と回復志向を行き来する
「ゆらぎ」ながら時間の経過に伴い、
通常、喪失志向から回復思考が多くなっていく回復プロセスであると考えられています。
Stroebe & Schut(1997)は次のように述べています。
『死別体験と折り合いをつけるために不可欠なのは、 悲嘆(悲しみの作業)に取り組むことである』
きちんと悲しんだ方が、次のステップに進めるということですね。
例えば、両親のお葬式で大泣きした妹が比較的すぐに悲しみから立ち直り、
悲しむ暇がなく涙を見せず大忙しで葬儀の準備などをしていた姉は、
後にうつ病を患うなどはよく聞く話です。 悲しむことは大切ですが、
しかし長い間ずっと続く持続的な悲しみの感情や否定的な感情は「悲嘆」を悪化させてしまいます。
でも
「がんばろう!」
とする肯定的な心の状態がずっと続くなら
「悲しみ」
の作業はおろそかにされてしまいます。
そこで、この心の状態を1日の中で
「揺らぐ」
ことによって人は悲しみから回復していく プロセスがあると考えられています。
つまり「悲しい」でも「がんばる」を繰り返しながらゆらいでバランスをとっていこうとするんですね。
これを1日の中で何度も繰り返し、
色んな感情が日内変動し徐々に
肯定的な感情が多くなって回復していくと考えられています。
次は死別体験の二次被害、リスク要因について具体的に書いて行きます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。 少しでもお役にたてたら幸いです。
参考文献
坂口幸弘:悲嘆学入門―死別の悲しみを学ぶ,昭和堂.