【①グリーフケアのこと】悲しみはなぜおこるの?
グリーフケアを学ぶことで、喪失体験による深い悲しみとどう向き合えばよいかを知ることができます。
また、心のケアの方法を学ぶことで、
悲しみや大切な人を失ったときにどのように対処すればよいかがわかります。
あらかじめこうした知識を持っておくと、
将来同じような状況に直面したときに、心の準備ができるようになります。
グリーフケアを学ぶことが『自分と向き合う』こと
グリーフケアを学ぶことが『自分と向き合う』ことになるのはどういう意味か
自分の感じていることを知ることは、「自分と向き合う」ということです。
グリーフケアでは、悲しみを抑えたり、消したりすることは目指しません。
むしろ、その感情を認識し、どのように感じているかを自分で理解することが大切です。
これにより、自分自身の感情に対して優しくなれたり、同じように悲しむ他の人に対しても理解が深まるかもしれません。
グリーフケアは自分の感情に正直になり、
それに対応する方法を見つけることで、日々の生活にどう取り入れていくかを学ぶものです。
衝撃的な出来事や対処しきれない喪失に遭遇してしまうと悲しみの感情を感じないようにしたり、なかったことにしようとしてしまいます。
一時的に感情鈍麻になることは、時に必要な防衛反応ですが、それが長引くと、自分自身に必要なセフルケアもおろそかになってしまいます。
こんな風に感じるのはおかしいのだろうか、と自分の感情を否定しないことが大切です。
まずはグリーフケアの学びを通して、自分の感情をしっかり感じること、そしてそれを自分自身のセフルケアにつなげること。
それが、=「自分と向き合う」ということの意味です。
これからグリーフケアのことを書いていこうと思います。
人の「感情」とは?を出来るだけ根拠を示しながら分かりやすく書いてい行きます。
人の心の動きを知り、だからグリーフケアが必要なのか~と分かってもらえたらうれしいです。
1悲しみについて【悲しみはなぜ起こるの?】
イギリスの精神分析学者、ボウルビー(1961年)は、愛着(親しい関係)について研究を行いました。
彼は、母親と離れた赤ちゃんが、まず強い不安を感じて母親を求めることに気づきました。
母親がいないと赤ちゃんは怒りや悲しみを表現しますが、
やがて諦めて、他の人の世話を受け入れるようになります。
ボウルビーは、この反応が大人の悲しみの感情にも似ていると考えました。
つまり、悲しみは自然に本能的に起こるものであり、その悲しみとどう向き合い、
どのようにして心の中で整理していくか、
解決と適応のために起こる反応が「悲しみ」だと主張しました。
この考え方によると、特に子どもは、母親に見捨てられることに強い不安を感じます。かつては、泣いたり怒ったりすることが、
母親に気づいてもらうための方法でした。しかし、大切な人を永遠に失った場合、泣いたり怒ったりしても、
その人は戻ってこないため、それが役に立たなくなってしまいます。
すると、活動が難しくなり、うつのような状態になることがあります。
最初のショックと感情が動かない状態のあとで、失った相手から少しずつ心を離していく過程が始まります。
ボウルビーは、この過程が、亡くなった人を受け入れながら新しい自分を作るために大切なステップだと考えました。
つまり、深い悲しみを経験することは、
新しい自分や新しい人とのつながりを作るために必要なプロセスなのです。
ボウルビーは、悲しみは新しい自分を作るために欠かせない過程だと言っています。
悲しみは自然に起こるものであり、その悲しみとどう向き合い、
どのようにして心の中で整理していくかが大切だと考えられているということですね。
それでは次は他の研究者たちが考える「正常な」悲しみのプロセスを見ていきましょう。
2.正常な悲しみのプロセス
多くの研究者たちが、悲しみを感じるときにどのような段階を経るかについて説明しています
ここではボウルビーとパークスという2人の研究者が提案した4つのステップを紹介します。
1)無感覚/感覚の麻痺
最初に、大切な人が亡くなったという事実が信じられず、
頭ではわかっていても感情が追いつかない状態です。ショックやパニック、現実を受け入れたくない気持ちが強く出ます。
この時期は、だいたい2週間くらい続きます。
2)切なる思い/思慕と抗議
次に、亡くなった人がいない現実がだんだんわかってきますが、その人を探し続けたり、
思い出の品にすがったりします。その人が戻ってこないと理解すると、強い怒りや混乱、さみしさが湧いてきます。
この時期は、2~4週間くらいがピークで、6~8週間ほどで少し落ち着いてきます。
3)崩壊
現実と向き合い始めると、気力がなくなり、他の人と関わることが難しくなります。孤独を感じることが多くなる時期です。この状態は8週間から1年ほど続くこともあります。
4)再建
最後に、失った人を心で受け入れ、自分の新しい生き方や役割を見つけていく段階です。新しい人間関係を作ろうとする気持ちも生まれます。
まとめ
他にも、アルフォンス・デーケンやパークスが提案したいくつかの悲しみの段階がありますが、これらは国や文化が違っても、
ある程度似たような過程をたどると言われています。
共通しているのは、大切な人の死によるショックや否定、怒りやうつを経験し、
最終的に新しい自分を見つけることが「正常な悲しみの過程」であるとされている点です。
ただし、悲しみの過程は人によって順番どおりに進むとは限らず、逆戻りすることや、止まってしまうこともあります。